プラスチック Plastics

 プラスチックは、可塑性のあるものと言うのが本来の意味ですが、日本では合成樹脂が加工されてできた製品一般について言われていますので、ここではその意味で「プラスチック」と呼んでいきます。

 

 石油を原料にして作られるプラスチックは、自由に形を作ることができ、軽くて強度もあり、安価なことから一気に私たちの生活雑貨などに普及しました。プラスチックが本格的に使われ始めてからまだ50年ほどですが、それまでにあった木材、金属、ガラス、陶磁器などに取って代わるようになり、漂着量は増大の一途を辿っています。

 


 プラスチックは上記のように、非常に便利で安価なために、幅広い人々に受け入れられました。そしてモノを大切に使う世の中から、悪くなれば捨てて新たに購入して使うという「使い捨て」文化を導いたモノの代表になりました。

 そんな中で大きな問題は、自然の中にプラスチックを分解したり食べたりする生物がいないことです。野外に捨てられたプラスチック製品は河川から海へ流れ込み、世界中を漂流し漂着を繰り返します。そんな中で、紫外線や波浪などの影響で砕けて細かくなり、マイクロプラスチックというレベルのサイズになって海を漂い続け、海洋生物への影響も大きくなってきています。こうしたマイクロプラスチックを回収し、洗浄、乾燥させた後に透明な容器に保存しておきました。しばらく後に、その蓋を開けたら、非常に嫌な臭いがします。身体に悪そうなその臭いは、プラスチックの目に見えない恐ろしさを感じさせてくれました。

 

太平洋側

太平洋側の事例

 

 2015年の夏、愛知県の渥美半島の太平洋側にある田原市の堀切海岸は、膨大な量のビニールやプラスチックゴミに覆われました。

 このとき、定例の漂着物調査に入った私は、あまりの光景に目を疑いました。これまでも漂着ゴミは南風に乗って渥美半島へは夏季に集中していましたが、これほどのことはありませんでした。ゴミの調査を始めたところ、一面に広がったゴミの多くにはバーコードのプリントされていない昭和のモノがほとんどでした。この大量漂着の前に台風が渥美半島沖合いを通過しており、調査を進めました。その結果判明したのは、そんなに遠くない自治体が以前に不燃ごみの処理を海岸に穴を掘り埋め立てており、その海岸が台風の波浪で洗い出され、軽いビニールやプラスチックゴミが生みに流出し、漂流して辿り着いたのが堀切海岸だった・・・という哀しいものでした。

 

 上の3枚の写真は、いずれも愛知県田原市の太平洋側でのプラスチックゴミ大量漂着例です。渥美半島の太平洋側はそんなにゴミの多い場所ではありませんが、多いときにはこんな惨状となります。南風が吹くと岸の近くまでこうしたプラスチック片を含むゴミがやってきて寄せては返し・・・しています。サーファーもそんなゴミだらけの浜を横切って、ゴミがプカプカ浮かぶ海で遊んでいます。

 

マイクロプラスチック


 上の2枚の写真はどちらも最近話題になっているマイクロプラスチックを含んだ漂着ゴミです。 マイクロプラスチックの定義には様々あり、直径が5ミリ以下のものを言うことが多いが、学者によっては1ミリ以下と言う人もいます。

 海洋生物への影響も大きいと考えられており、吸収された化学物質の臓器による摂取と濃縮が一番の問題点と考えられます。。中でも、プラスチック粒子は、環境と周囲の海水中に普通に存在する合成有機化合物(PCB)などをその表面から吸収することによって高度に蓄積して運搬する可能性があります。

 肉眼による確認は難しいのですが、化粧品などに含まれるマイクロビーズと言われる微細なプラスチック球は、下水のフィルターを通り越して海にまで届いているのが確認されています。

 ここ最近数十年間の世界のプラスチック消費量の増加により、マイクロプラスチックは全世界の海洋に広く分布するようになり、その量は着実に増大しています。中でも日本近海はそのホットスポットと呼ばれ、マイクロプラスチック確認量の非常に多い地域と言われています。

日本海側

日本海側の事例

 日本海側の海岸では太平洋側とは逆に、晩秋から冬にかけてがプラスチックゴミの大量漂着が見られる時期となります。日本海を取り巻く国々の出したプラスチックッゴミは、湖にも似た日本海に流れ込み、潮目にはプラスチックゴミの長い帯が見られるほどです。そんな漂流ゴミは北西の季節風によって、日本海側の海岸に打ち寄せられます。アジアの国々の発展に伴いプラスチックの使用量は驚くほど増えました。そして捨てられる量も半端無く、冬場に日本海側の海岸を歩けば、カラフルな漂着ゴミに驚くことでしょう。そのほとんどはプラスチックゴミです。

 日本海側の海岸のあちこちでは、春や、夏の海水浴シーズン前に浜掃除が行われます。これは素晴らしいことなのですが、一つ問題があります。それはゴミ処理問題です。最近では自治体が回収してくれることもありますが、草木と一緒にプラスチックゴミが野焼きされることが多いのです。プラスチックの燃える臭いが・・・


 陸からやってきたと思われるプラスチックゴミも多いのですが、漁具もかなり目立ちます。その代表は浮き、フロート、ブイなどと呼ばれるもの。網ごと流出した漁具もあり、それらは大きな塊となって海面近くで漂流し、海洋生物に絡みついたりして、被害を与えています。右端の写真は、中国製の刺し網漁具です。


 困った問題の山積したプラスチックゴミですが、時折うれしいモノも混じっています。それはかわいい玩具。海関連の灯台の形をした輪投げ玩具や、大好きな恐竜をかたどったフィギアなど、ついついうれしくて、家に連れて帰っちゃいます。そんな玩具はずいぶん溜まりましたわ。(笑)